Ⅶ 大規模改修工事のマネージメント手法

管理組合の業務の中で、最も出費額の大きな大規模計画改修工事を如何に安く実施するかは、管理者や理事方の実行能力を期待される一番の課題です。ここで問われる経営感覚は、通常の詳細な業務管理力とは別な要素です。企画全体を統括し指揮することは、あまりご経験されたことがないかも知れませんが、公共工事や工場プラント設置などの現場を統括したご経験があれば十分です。
その仕事内容を理解し、必要な技法や工期と費用を含めて全体を俯瞰しつつ、関係者全員が安全にその空間と時間を共有して、最終的に良い結果を生み出すように工夫する、幅広い配慮と臨機応変の気づきの経営能力が求められます。

実際の改修工事の技能や工程等は、請負施工業者の現場代人が統括してくれますから、管理組合としては住民の意見や期待を適切に施工業者へ伝え、相互間のコミュニケーションに努めて、是非とも善意の信頼関係を構築することが必要です。
注文者と請負業者としての立場の論理で形式的な高圧的態度を見せたりしては、決して良質で短納期のお得な結果は得られません。改修工事の成果は両者で協働して作り上げるものです。
信頼関係を生むコミュニケーションが必要です。関係者全員が満足する方法は正にこれです。
 
 
約20年前に経験した排水用竪管の一括取り換え工事の際、管理会社からの 2,000万円の見積もりを交渉しても 10%も値引き出来なかったのに、途中から見積もりに参加してもらった専門業者が約 1,200万円で請負って、要領よく完工した後に『全住民が業者の工程に合わせて在宅してくれたので短納期で完工できた』と謝礼に 90万円程を更に値引きしてくれたことが有りました。

私は50年前から約10年の間大手造船会社の工場で、修繕船の営業担当者として、海外からの貨物船のドック改修工事を、船体・機関・電機の各担当技師と伴に各船毎の改修工期と追加売上金額決定の交渉役を任されていました。
早く工事を終えて用船期間に戻したい船主側代表の監督と、残業時間規制の厳しい当時の工場現業課長方の間に居て、如何に全体工期を守れるかが、その一隻の工事売り上げ利益率を決める状況でした。
工程の一番長い作業現場に何とか協力して貰うため、船主側と交渉して残業代の上乗せを認めさせ、現業課長らを説得して夜遅くまで当該現場に立ち会う等長い日々だったように思います。

間接経費の節減には施工品質と工期短縮が一番成果を上げられる方法です。
天候などにも影響を受けますので、関係者間の調整を図ってタイミング良くコミュニケーションを取ることがプロジェクト・マネイジメントの基本であると思います。

管理会社に頼らない自律的管理を主体に

勿論大規模改修の企画段階から修繕委員会の準備やコストの安い一次下請け施工業者に直接接触することなど、つい管理会社に頼りたくなる側面は有りますが、その誘惑に負けては改修工事費を節減する目的は達成できません。
見積もり合わせに参加してもらう施工業者の選定や現場代人の人柄の見分けには、営業や人事のご経験が役立つことでしょう。

理事会や修繕委員会の皆さんの人生経験を生かした話し合いの上で、多数決により納得して貰うことも管理組合運営に必要だと思います。
小さな金額を値切ったりして施工業者の善意を裏切らないことも大事です。相互に決めたことは実行することです。
全員参加型でお互いの気づきを好意的に表明し合う雰囲気が一番大切であると思います。

マンション改修工事を取り巻く社会環境

今日、マンション改修業界では、現在の業務形式の仕組みが出来上がっており、管理会社以外にも専門知識を持つ人々を活用しようとの呼びかけが有りますが、常識的な(官庁的な)やり方では過去の工事費実績の(高い)単価水準から脱却できず、改修工事価格の節減にはあまりにも生産性の低い(あまり有効でない)行政によるマンション管理組合支援体制の下に置かれています。
生易しい生活環境にあるとは言えないこの業界全体の客観情勢です。そこら中に利益相反取引行為や不誠実が蔓延しているように思えます。
 
今のテレビや新聞などの情報も決して信頼できない、不信だらけの世の中になりました。
政界も経済界も医薬業界も教育や各学会ですら、身勝手な目先の利益や役得だけを宣伝し、追求しているように見えます。
 
各マンション管理組合が、実質的に工事を遂行する関係者を糾合し、しっかり体制を組んで、自分たちの利益共同体自身で情報を集めながら着実に対処して行くしか、自分たちを守る解決策はないと言うのが現在日本社会の置かれた状況ではないでしょうか。
 
“三人寄れば文殊の知恵”で、同じ立場の人間同士が協力して、今を乗りきって参りましょう。
僅かですが私共の経験とノウハウをシェアしたいと考えています。